きみに会える場所~空の上ホテル~

地面をたたいて、カナタさんは文字通り笑い転げた。

「いやー、美緒ちゃん、きみ、いいわ。なんかおれのツボにハマるっていうの?」

立ち上がったカナタさんは、まだはーはー言ってる。

「いつまでも、そのキャラでいてください」

そこまでウケなくても、と思ったけど、ほめられたような気もするので気にしないことにした。

カナタさんは、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。

「それで、美緒ちゃんは果樹園まで泣きに来たの?」

私は首を振った。

「裏門を探してるんです。外へ行くために」

カナタさんの顔つきが厳しくなった。

「外は危ないよ。やめた方がいい」

「でも、外にいる東条茂人さんをホテルまで連れて来ないと、多分、私は元の世界に戻れないんです」

私は今までのこと(もちろんサキさんのなくし物については内緒で)をかいつまんで話した。

カナタさんはあごを指でとんとんとたたきながら考え込んでいた。

「なるほど。ここで困っている誰かが美緒ちゃんを呼んだってことか・・・・・・」

腕組みをして一人でうろうろと歩き始めた。ぶつぶつ何かをつぶやいている。

「確かに、予定の日を過ぎてもここに着いてないお客様も心配ではある」

「かといって、本来ここに来るはずのない美緒ちゃんを外に出して大丈夫か」

私はただ黙ってカナタさんを見ていた。立ち止まったカナタさんがぱっとこちらを向いた。

「ちょっと、奈美さんから渡されたっていうパンフレット、見せてくれないか」

「ははははいっ」

私は手提げの仕切りからパンフレットを取り出した。

読み始めていくらも経たないうちに、カナタさんは首を振った。

「これ、ずいぶん前のじゃないか。この地図じゃ役に立たないよ」

「ええっ!」

そんな・・・・・・。どうしよう・・・・・・。