きみに会える場所~空の上ホテル~

男の人が説明をしている。

でも、私はもう何も聞いていなかった。それどころじゃなかった。



亡くなった人がここに来てるってことは・・・・・・。

もしかして・・・・・・。



「ではごゆっくりお過ごし下さい」

男の人は林原ゆり子に深々とお辞儀をした。

大女優・林原ゆり子は荷物係の女性に案内され、奥の方へ消えていった。

私はつかつかとカウンターへ歩み寄った。

男の人は反射的に笑顔を浮かべたが、相手が私だと知るとじろりとにらんだ。

「なんだ、またお前か」

むかつくけど、今はそれどころではない。
私は彼の言動をスルーした。

「ねえ、ちょっと教えてほしいんだけど」

「・・・・・・もしかして、私、死んだの?」

「どうしてそう思うんだ?」

「だってさっきの人、女優の林原ゆり子でしょ?亡くなったってニュースで観たもん」

男の人の鋭い目が私を射抜く。

「死ぬようなこと、なんかしたのか、お前」

私はふるふると首を振る。

「ううん。何もしてないと思うけど・・・・・・」

男ににらまれると、自信がなくなる。
居眠りしてる間に歩き出して窓から落ちたとか?

ないない、それはない。私、そこまでぼんやりしてない、と思う。