調理室を出たところで、サキさんが待っていた。
「美緒ちゃん、忘れ物」
そう言って、手提げを差し出した。
ああ、そっか。さっきどこかに置いてきちゃったんだ。忘れていた失恋のことを思い出して、心がずきりとする。
「ありがとう」
私はお礼を言うと、ホテルのパンフレットを手提げの仕切りの中にしまった。
「立ち聞きするつもりはなかったんだけど、聞こえちゃった。お客様を迎えに行くなんて、大丈夫かな」
サキさんも少し心配そうだ。
「大丈夫だよ。地図ももらったし。それに、どっちみち奈美ばあちゃんの悩みを解決しないことには、私戻れないんだよ?」
「それはそうなんだけど・・・・・・」
「サキさんの時みたいに、裏口から出てちゃんと地図の通りに迎えに行くから、大丈夫」
私の決心が固いことを見てとったのか、サキさんは仕方ないわね、とつぶやいた。
「いい、美緒ちゃん」
サキさんは顔をぐっと近づけた。
「裏口を出て、野菜畑と果樹園を抜けたら、大きな門があるから。そこから出て塀に沿って正面玄関の方までぐるっと周るといいわ。迷子になったら大変だから、絶対に塀から離れちゃダメよ」
「うん、わかった。そうする。ありがと、サキさん」
奈美ばあちゃんも、サキさんも、みんないい人だなあ。こんな人たちに心配かけなくてすむように、ちゃんと戻ってこなくちゃ。ちゃんと東条茂人さんを連れてくるんだ。
私はサキさんに笑って手を振ると、裏口に向かって歩き出した。
「美緒ちゃん、忘れ物」
そう言って、手提げを差し出した。
ああ、そっか。さっきどこかに置いてきちゃったんだ。忘れていた失恋のことを思い出して、心がずきりとする。
「ありがとう」
私はお礼を言うと、ホテルのパンフレットを手提げの仕切りの中にしまった。
「立ち聞きするつもりはなかったんだけど、聞こえちゃった。お客様を迎えに行くなんて、大丈夫かな」
サキさんも少し心配そうだ。
「大丈夫だよ。地図ももらったし。それに、どっちみち奈美ばあちゃんの悩みを解決しないことには、私戻れないんだよ?」
「それはそうなんだけど・・・・・・」
「サキさんの時みたいに、裏口から出てちゃんと地図の通りに迎えに行くから、大丈夫」
私の決心が固いことを見てとったのか、サキさんは仕方ないわね、とつぶやいた。
「いい、美緒ちゃん」
サキさんは顔をぐっと近づけた。
「裏口を出て、野菜畑と果樹園を抜けたら、大きな門があるから。そこから出て塀に沿って正面玄関の方までぐるっと周るといいわ。迷子になったら大変だから、絶対に塀から離れちゃダメよ」
「うん、わかった。そうする。ありがと、サキさん」
奈美ばあちゃんも、サキさんも、みんないい人だなあ。こんな人たちに心配かけなくてすむように、ちゃんと戻ってこなくちゃ。ちゃんと東条茂人さんを連れてくるんだ。
私はサキさんに笑って手を振ると、裏口に向かって歩き出した。

