私があんまりじっと見つめたからだろうか。奈美ばあちゃんは、ちょっと照れくさそうに付け加えた。

「誰かのリクエストがあれば、何でも作る。別にあたしだけじゃないさ。どこの家の母親もおんなじだろ」

私は少し考えてから言った。

「うーん。どうかなあ。お惣菜とか出来合いのものを買ってきてすませるってこともあると思うよ」

奈美ばあちゃんはぎょっとした顔をした。

「惣菜なんか買ったら高くつくだろう?」

「共働きだったりいろいろ忙しかったりしたら、少しくらい高くても買っちゃうんじゃないかな」

私はスーパーのお惣菜コーナーを思い出しながら言った。

「美緒の母さんもそうなのかい?」

「・・・・・・ううん、うちの母さんはお惣菜は買わないよ。どんな材料を使ってるのかわからないのはいやなんだって」

インスタントラーメンも買わないし。

「そうかい。いい母さんじゃないか」

「えっ」

「家族の健康は自分が守るってことだろう? ちゃんとした、いい母さんだよ」

奈美ばあちゃんはしきりに大きくうなずいた。

「うん」

私は湯飲みに目を落としてつぶやいた。母さんがいい母さんだってことは、よくわかってる。

いつもおいしい料理を作ってくれる。家の中もきれいだし、洗濯物はいつも真っ白でいいにおいがしてる。

それは確かにとてもとてもありがたいことなんだけど、それでもたまに母さんを見るのがこわい。

やっぱり私に問題があるんだろうな。