きみに会える場所~空の上ホテル~

冷蔵庫にまだパンが残っている。でも朝も食べたのであまりほしくない。

戸棚に何かないか探ってみる。

母さんはレトルト食品や即席ラーメンが嫌いだから、うちにはほとんどそういうものは置いてない。

「どんな物使ってるのかわかりゃしない。あんなもの食べなくていいわ」って母さんは言うけど、私はたまに食べたくてたまらなくなる。

そしてどうやら父さんも同じ意見みたい。なぜかっていうと、夜中に目が覚めてトイレに起きた時に、キッチンから即席ラーメンのいいにおいがしてくることがあるから。

母さんは絶対に、即席ラーメンを作ったりしない。ましてや夜中に何か食べるなんてこと、100パーセントありえない。

・・・・・・もしかしたら、父さんが秘かに買っておいたのがまだ残っているかも。

私は、戸棚をしつこく隅々まで探した。


そうやって奥の奥にひっそりと、干ししいたけの袋に隠すように置いてあったみそラーメンを発見した。

「やった!」

私はいそいそと鍋にお湯をわかした。冷蔵庫に刻みネギがあったので、せめてもと投入する。

出来立てほやほやの即席ラーメンをどんぶりに移す。湯気がふわふわと漂って鼻をくすぐる。

「いただきまーす」

広いテーブルに一人座ってゆっくりとめんをすする。ほんのちょっぴり汁も飲む。

あー、おいしいなあ。

顔がほんのり汗ばんでくる。

どんなにゆっくり食べても、一人で食べるとやっぱりあっという間に食事はすんでしまう。

「ごちそうさまでした」

いつものように食器を洗おうと席を立つ。

キッチンにはまだみそラーメンのいいにおいが漂っている。

このラーメン、父さんの取っておきだったのかもしれないなあ、とふと思う。

お腹がすいてたからつい食べちゃったけど、悪いことしちゃったかも。後で袋めんをこっそり買ってこよう。みそラーメンがしょうゆラーメンに変わってたりしたら、父さん驚くかも。

くすくすと笑いながらどんぶりを洗っていると、車のエンジン音が聞こえた。

母さんが帰ってきた。