きみに会える場所~空の上ホテル~

目を覚ました時、自分がどこにいるのかよくわからなかった。

顔をがばっと上げた途端、斜め前に立っている男の人と目があった。思い出した。ここは帰りのバスの中。気まずくて窓の外を見た。

「次はー、花畑団地北口。花畑団地北口です」

ほっとして降車ボタンを押した。ピンポン。全部のボタンに紫色の明かりがともった。

「次停まります。ご乗車ありがとうございました」
機械的なアナウンスが聞こえる。

やがてバスが停車した。定期を見せてそそくさと降りる。

バス停から家までは歩いて三分もかからない。

雰囲気がよく似た家が建ち並んでいる。深緑色の屋根が桜木家の家だ。

私は門を開けて中に入った。

家には明かりがついていた。父さんは超多忙でいるはずないから、きっと母さんだ。

そっとドアの取っ手を引いてみた。鍵がかかっていた。

インターホンを鳴らした。

「はい?」
母さんの声だ。

「ただいま」

ガチャ。鍵があく音がした。

私は中へ入った。