きみに会える場所~空の上ホテル~

「だから、お前はもう帰れるってこと」

レイの手が突然私の髪をわしゃわしゃとなでた。

「な、何?」

どぎまぎしてレイを見つめる。

「お手柄ってこと。よしよしポチ、よくやったなって感じか?」

・・・・・・犬ですか、私は。

でも、こんな風に髪をなでられると、うれしくて気持ちがふわふわする。

少なくとも、嫌われてはいないってことだよね。

「さ、ほら行け」

手でしっしと追い払われる。

そのしぐさにぐさっとくる。

いっつもこうだ。舞い上がってたらすぐ落とされる。全然、気が抜けない。

私は小さく息をついて歩き出した。

でもまあ、いいか。二度あることは三度あるっていうし、きっとまたいつか、困ってる誰かに呼ばれて、ここに来られるだろう。

その時には、レイに犬扱いされないように、せめてぎりぎり恋愛対象内におさまるくらいにしたいなあ。

帰ったら、とりあえず腹筋でもやってみるかなあ。

「それじゃあまたね、レイ」

回転扉の前で手をひらひら振る私を、レイは何も言わずに見ていた。

私は手提げを持ち直すと、ぐいっと回転扉を押した。