きみに会える場所~空の上ホテル~

「本日のケーキは、苺のタルトでございます」
全てをセッティングし終わったレイが、ベッドに腰掛けたゆり子さんに言った。

「ありがとう。下げてほしい時にはまた電話するわ」
「失礼いたします」
レイは深々とお辞儀をすると、私にはもう目もくれずに去って行った。

「さて、いただきましょうか」
「はい」

でも、いすが一つしかない。
「いす、もう一つ持ってきてもらうように頼めばよかったですね」

「いいのいいの。私はこっちで食べるから」

ゆり子さんは、苺のタルトとティーカップをベッドのサイドテーブルに持って行った。

しばらく、私たちは無言だった。フォークでタルトをつっつく音だけがしていた。

タルトをほおばって紅茶を飲むと、口の中に甘い苺の香りとアールグレイの香りが広がった。思わずほほがゆるむ。

「おいしー」

ゆり子さんも目じりを下げている。
「いけるわね、これ」

あんまりお腹がすいていたから、あっという間に食べてしまった。タルトってどれも小さいって思うのは、私だけかな。でも、ゆり子さんももう食べ終わりそうだ。

「甘いものを食べると、ちょっぴり辛いものが食べたくなるのよね」

ゆり子さんがタルトの最後のひとかけをフォークですくった。

「売店があれば何か買ってくるんだけど、このホテル、売店ないのよ」

ちょっぴり不満そうだ。

あれ、ちょっと待った。・・・・・・辛いもの?

「先輩。ありますよ辛いもの」

私は手提げをごそごそとかき回した。

「じゃーん! ポテトチップスでーす」