きみに会える場所~空の上ホテル~

「あの、何か」
「ちょっと、それ見せてちょうだい」
「はいっ」

私は反射的に手提げを差し出した。林原ゆり子さんは、何も言わずに手提げを凝視している。

洗濯してなくてよれよれだから、あんまり見られると恥ずかしいな。

・・・・・・。

何となく間が持たなくて、私は口を開いた。

「あんまりかわいくないでしょ、それ。学校指定の手提げなんです。学校行く時は必ずそれじゃなきゃいけなくて。先生が門のところにいて、何げにチェックしてるんです」

今は春休みだから、別にこの手提げじゃなくてもよかったんだけど、いろいろ入れっぱなしにしてあるから、ついこれを持って出ちゃった。

「・・・・・・あなた、青葉学園に通ってるの?」

林原ゆり子さんが顔を上げた。

「はい。今度二年生になります」

「・・・・・・そうなの」
彼女はもう一度手提げを見て目を細めた。

「この青葉の校章、なつかしいわ」

私に手提げを手渡しながら言った。

「私も、青葉学園の生徒だったの」