きみに会える場所~空の上ホテル~

林原ゆり子さんは、ベッドにぽすんと腰を下ろした。

「落ち着くのよね、この部屋」
辺りを見回す。

つられて私も部屋を見る。確かに清潔そうで、きちんとしてるけど・・・・・・。

林原ゆり子さんは、ほうっと息をついた。
「今まで泊まったどんな高級ホテルよりも、落ち着くわ。さて、お茶にしましょうか」

彼女は勢いをつけて立ち上がると、サイドテーブルに置かれたプッシュホンの受話器を取り上げて数字を押した。

「301の林原だけど、アフタヌーンティーセットを二つ、お願い。紅茶はそうねえ、・・・・・・アールグレイで。ケーキはおまかせするわ」

ケーキ?! ケーキ食べられるの?! うれしいー。もうお腹ぺこぺこ。私は期待に満ちた目で林原ゆり子さんを見た。

受話器を元に戻すと、彼女はこちらを向いた。目が笑ってた。

あれ? また頭の中、読まれちゃった?

「すぐ来るらしいわ。どうぞ、いすに座って待ってて」

「はい」
私はいすに腰掛けて手提げをひざの上に置いた。

ぞうりをスリッパに履き替えて林原ゆり子さんが戻ってきた。ちょっと普通の人っぽくなった気がする。

「あなたもよかったら、スリッパ使ってちょうだいね」

私の足元にスリッパを置いてくれる。

「あ、どうもありがとうございます」

私はすっかり気持ちが楽になって、スリッパに履き替えた。

ふと見ると、ベッドに腰を下ろした林原ゆり子さんが、私の手提げをじっと見つめていた。

気のせいかな。眉間にしわが寄ってるように見えるんだけど・・・・・・。