きみに会える場所~空の上ホテル~

歩くと、床がぎいぎい鳴った。このホテル、結構古いんだな。

「301」と書かれたドアを林原ゆり子さんが開けた。鍵はかかっていなかった。無用心、でもないか。

「別に盗られて困るようなものなんて、ないでしょ?」

おどけた顔をして、私を見る。考えていることを見抜かれてどきりとした。

「入ってちょうだい」

「お、お邪魔します」

おずおずと足を踏み入れる。お茶っていうから、てっきりホテルのラウンジかどこかに行くんだと思ってた。

301号室は、入ってすぐにバスルームがあり、その向こうにベッドとサイドテーブル、窓際に丸いテーブルといすがあるだけの簡素な部屋だった。

大女優の林原ゆり子さんには、およそ不似合いな部屋だと思った。