きみに会える場所~空の上ホテル~

気合を入れたのがきいたのかな。あれは・・・・・・。

私は目をこらして桃の木を見た。

枝の先から垂れ下がっているのは、・・・・・・黒いブラだ!

「よしっ」

私は小さくガッツポーズをすると、手を伸ばした。

と、届かない・・・・・・。もう少しなんだけど・・・・・・。

ジャンプしたら取れるかもしれないけど、やめといた方がいいよね。私はブラを飾っている手の込んだレースを見ながらため息をついた。

ここの果物を収穫する人たちはどうしてるんだろう。

ぱっと頭にレイの姿が浮かび上がった。思わず顔が赤くなる。いや、レイはこの際置いとこうよ。背が高いから手、届くし。

自分に言い聞かせてるのに、桃を収穫するレイを思い浮かべてしまう。すらりとのびた指が桃をそっと・・・・・・。

だーかーらー。私は自分の後頭部をぱしぱしたたいた。そういうこと考えてる場合じゃないでしょうが。

もっと背が低い人、例えばナミばあちゃんが、果物をとりたい時はどうするんだろうって考えたら、ふっとひらめいた。

「やっぱり脚立かはしご、使うよね」

私は果樹園を遠くまで見渡した。脚立は、すぐに見つかった。

ちょっと重かったけど、脚立を引きずってきて、桃の木の下にセットした。

「これでよしっと」

私は、おそるおそる脚立に上った。一歩上がるたびに、体がぐらっと揺れた。腕をぐるんぐるん回してバランスをとった。

腕を回そうなんて思ってないのに、無意識にそうしてた。不思議だなあ。