きみに会える場所~空の上ホテル~

トマトの畝から最後の白菜の畝まで全部見たけど、サキさんのなくし物は見つからなかった。

「これだけ探したんだから、野菜畑にはないってことだよね」

私はよいしょと立ち上がると腰をたたいた。普段全然運動してないから、太ももや二の腕がぱんぱんだ。

うーんとのびをして野菜畑のすぐ先に広がっている果樹園を見る。みかん、りんご、レモンにさくらんぼ、他にもたくさん。どの木にもおいしそうな実がなっている。

「すごいなあ」

私は木々を見上げたまま近づいた。「黒いブラ黒いブラ」とぶつぶつ唱えながら木を一本ずつ見て歩いた。

首が疲れてきた。何分かおきに肩をたたいた。汗が耳の横をしたたり落ちる。

探し始めてから、どれくらい経ったんだろう。私は空に太陽を探した。

でも、空は薄ぼんやりしていて、太陽は見つからなかった。知らんぷりされたみたいな気がして、ちょっと肩をすくめた。

でも、これはポーズ。そんなにね、気にしてるわけじゃないんだ。

こうやって「残念な気持ち」とか「悲しい気持ち」とかを外へ出しちゃうと、自分の中で気持ちが切り替わるっていうか。

私は、パンパンとほっぺたをたたいた。さあ、気合入れていこう。

「ファイトだ、美緒。ファイト、ファイト」