どこかで、音楽が鳴っている。
聞き慣れない、ボーカルのない音楽。

誰かの靴音が響く。人の話し声もする。

図書館に誰か来たのかな。

はっとして目を開ける。
最初に目に入ったのは、すりきれた絨毯をふみしめる自分の靴だった。



「……なんで、絨毯?」

顔を上げて辺りを見回した。

色あせたソファとテーブル、壁際にはラック、背の高い観葉植物。

全体的に落ち着いた雰囲気だけど、見覚えは全くない。

後ろを見ると、古めかしい回転扉があった。

ということは、ここから入ってきたのかな。
・・・・・・全然覚えてないけど。


っていうか、私、いつ席を立ったのかな?

眠ったまま図書館を出て、ここまで来た?

「ないない、それはない」
一人で首を振る。

ということは、現実的に考えて・・・・・・



「これは、多分、夢ね」
うんうん。そうに違いない。

なんか気が楽になった。
せっかくだから、ちょっと探検してみよう。

私はそろそろと歩き出した。