空の上ホテルの屋上に、レイと私がいた。二人っきりで。

他に見えるのは、空とあのエスカレーターだけ。

私とレイはまるで恋人同士のようにしっかりと抱き合っている。

「悪い。おれ、もう行くわ」

レイがすっと私から離れる。そのまま振り返りもせずにエスカレーターに乗る。

どんどんレイの姿が小さくなっていく。

私はその場で何も言えずに立ちすくんでいる。頭の中でがんがんと音がしている。

どどどどん、と効果音入りで私の顔が少しずつアップになる。青白い自分の顔。涙を浮かべた悲しそうな顔。

悲しい思いを抱えながらも、どうして自分の顔をこんな風に見ることができるんだろう、と不思議に思った。鏡もないのに。

そう思った途端、目が覚めた。

目の端から流れた涙が、うすい筋を作っていた。泣きながら眠っていたみたい。

・・・・・・どうしてこんな夢を見たのかな。昨日はすっかり気持ちよくなって眠ったはずなのに。いろんなことを知ってしまって神経が高ぶってるのかな。

レイと恋人同士みたいな雰囲気だったのはちょっとうれしかった。でも、それって多分私の願望がにじみ出てるんだろうなあ。

私は夢の名残を落とすように頭をぶんぶんと振った。

時計を見ると、アラームが鳴る五分前だった。いつもならもぞもぞと眠り直すところだけど、今日はそんな気になれなかった。

今日は、水城さん、つまりレイのお父さんがここへ来る日。

レイはあんな調子ですっかり後ろ向きだけど、私は気持ちよく過ごしてもらいたいなあって思う。水城さんだけじゃなく、他のお客さんにも。

フロント初心者の私だけど、頑張らなくては。

私はよし、と気合を入れて起き上がった。