きみに会える場所~空の上ホテル~

つやつやした天板は、まるでピアノの蓋みたいだった。

何気なく指で引っ張ると、ピアノの蓋みたいに開いた。

中にノートパソコンが入っていた。

「!!!!」

私はふかふかの椅子に腰掛けると、ノートパソコンを開いて電源を入れた。

画面がゆっくりと起動していった。

早く、早く。

私は管理室のドアをちらちらと横目で見ながらパソコンが起動し終わるのを待っていた。

画面に文字が出た。

「パスワードを入力して下さい」

うわっ、やっぱりサキさんの言ったとおり、パスワードが必要なんだ。

パスワード、パスワード。

カナタさんなら、何をパスワードにする?

私は試しに「kanata」と入力してみた。

「パスワードが違います」

・・・・・・。やっぱりなあ。名前ってことはないよね。

「shihainin」と入力する。支配人、でどうかな。

「パスワードが違います」

「sihainin」では? h取っただけだけど。

「パスワードが違います」

「soranouehoteru」はどうかな。ここ、空の上ホテルだし。

「パスワードが違います」

・・・・・・。

その後は「saki」「rei」「nami」、念のために「mio」も試した。

「kanatatosaki」とか「kanatatorei」とか「sakitorei」とか。思いつく限りのものを試してみた。

でも、何を入力しても、「パスワードが違います」としか画面には出てこなかった。

せっかくここまできたのに。

悔しくて涙がにじんだ。

だけど、もう自分の部屋に戻って明日に備えなくちゃいけない。

何といっても明日から私がフロントに立たなくてはいけないんだから。

私は大きくため息をついて机の天板を元に戻した。