きみに会える場所~空の上ホテル~

パソコンでの買い物は、従業員になりたてのあの夜以来だった。

そうそう、あの次の日、カナタさんにこれをもらったんだっけ。

私はブラウスの一番上のボタンを外すと、ペンダントを取り出した。

ペンダントトップは、アーチを描いた虹。石なのか金属なのかもよくわからないけど、すごく気に入ってシャワーを浴びる時以外はずっと身につけてる。

私のために買っておいてくれたカナタさんの気持ちがうれしくて。

それに、このペンダントをもらった日は、レイがお母さんのことを知った大切な日だ。

大事な記念の日。だから私にとっても、このペンダントは特別なんだ。

私はペンダントトップを手でなぞると、そっと元へ戻した。

「メイク道具、メイク道具」

二回目の買い物は、前よりずっと早く進んだ。「メイク初心者向け」と書いてあるものばかり買い込んだ。

「以上で買い物内容を決定してよろしいですか?」

と画面に出てきたので、迷わず「決定」ボタンをクリックする。

「お買い上げありがとうございました」とメッセージが表示され、買い物は終了した。

ほっとしてパソコンの電源を落とすと、真っ暗な画面に自分が映っていた。

黒いベスト姿にまだ違和感がある。

・・・・・・私がフロント。

はあーっと大きくため息をついた。

「悪い」

ぽつりと言ったレイの姿を思い出す。真面目なレイが、仕事をボイコットするなんて、よっぽどのことなんだろう。

レイが水城さんのことをお父さんだと思っているので、仮にそうだとして、お父さんに会いたくないっていうのは、・・・・・・やっぱり恨んでるからなのかな。

お母さんが早くに亡くなったのは、お父さんのせいだって思ってるのかな。

だけど、本当にいいのかな。お父さんに会わなくて。