きみに会える場所~空の上ホテル~

「美緒ちゃん、パソコンの扱いに慣れてるのね。よかったわ」

サキさんがほっとしたように言った。

「パソコンは大丈夫。問題は会話かな」

今日のお客さんとの会話を思い出すと自信がなくなる。あの後レイにどれだけダメ出しされたか。

思わずため息が出た。サキさんがぽん、と肩をたたいた。

「きちんとお客様と向き合って話をすれば、最後は何とかなるわよ。おどおどしないで落ち着いてやれば大丈夫。どうしてもわかんないことがあったら、呼び出してくれていいから」

極上の微笑みでそんな風に言われると、できそうな気がしてくる。

「ありがとう、サキさん」

サキさんは私の目をまっすぐ見つめ返した。

「こっちこそ、どうもありがとう。レイに仕事を譲ってくれて」

「え?」

「空の上ホテルには、明確なルールがあってね。働かない者はここにいちゃいけないの。美緒ちゃんだって、向こうの世界からここに来た時は誰かのために働いてたでしょ?」

私はこくりとうなずいた。

「だから、コックも嫌、フロントも嫌、荷物係も支配人も雑用も何もしないってことになったら、レイはここにはいられないわ」

「いられないって・・・・・・」

思わずごくりとつばを飲み込んだ。レイは奈美ばあちゃんや他のたくさんの人たちみたいにエスカレーターで上に行っちゃうってことなのかな。

そんなの嫌だ。

「まあ、レイのボイコットの原因は何となくわかるけど」

サキさんはため息まじりにパソコンのキーボードをたたいた。

「水城さんって人のことですか?」

サキさんは目を見張った。

「サキさんに呼ばれてフロントに入った時に、レイが来たんです。お客さんの情報を見てから急に態度がおかしくなって・・・・・・」