きみに会える場所~空の上ホテル~

夕食はいつも、お客さんの夕食が全て終わった後でみんなで食べる。

フロントには「ただいま席を外しております。御用の方はブザーを押して下さい」と書いたプレートを出すのだとサキさんから聞いた。

「お客様は特に急ぎの用事があるわけじゃないから、ブザーは滅多に鳴らないの」とサキさんは言ってた。

だからいつも四人でテーブルを囲むんだけど、今日はカナタさんの席が空いたままだ。

「サキさん、カナタさんは?」

ごぼうのきんぴらを箸でつまみながら、サキさんが答えた。

「出張。あわてて出て行ったわ。三日間留守を頼むって言ってた」

「えーっ」

「ありえないわよね。この人手が足りない時に」

サキさんがやれやれと首を振った。

私とサキさんはちらっとレイを見た。さっきからむすっとして一言もしゃべらない。

「ちょっとレイ、いい加減にしてよね」

サキさんの声にレイが反応して顔を上げた。

「何に怒ってるんだか知らないけど、今は夕食。安らぎとくつろぎの場なのよ、ここは」

サキさんがたたみかけた。

「あんたがそんな辛気臭い顔してたら、気持ちが休まらないでしょうが」

「・・・・・・ああ。悪い」

レイは突然立ち上がるとぼそりとつぶやいた。

「ごちそうさま」

「ちょっと、待ちなさいよ、レイ。あんた全然食べてないじゃない」

「もういい」

そのまま食堂を出て行こうとする。

「待ちなさいってば」

サキさんがレイの前に立ちはだかった。心配そうな顔になっている。

「どうしたのよ。体の具合でも悪いの?」

「いや、別に」

視線を合わそうとしないレイに、とうとうサキさんが切れた。

「じゃあ、一体何なのよ。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい!」