きみに会える場所~空の上ホテル~

「ありがと。美緒ちゃん。助かったわ」

サキさんが花のような笑顔で私を見た。

「どういたしまして。さっきのお客さん、どんな用事だったの?」

私は背中に紙を隠したまま尋ねた。

サキさんはふうっとため息をついた。

「デートのお誘い」

「ええっ!! それで? それでどうしたの?」

思わず大きな声で聞き返してしまった。

「もちろん、やんわりとお断りしたわよ。仕事もあるし。・・・・・・でも、どうかなあ」

サキさんは困ったなあという顔をした。

「あきらめてくれたかなあ。後を引くとなかなか次へ進めなくなっちゃうのよね」

そっか。ここへ来た人は本当はいつまでもここにいるべきじゃないんだ。

「まあ、奈美さんみたいに、絶対に伴侶が来るまでここで待つって決めてるような人なら、いっそここで働いてもらう手もあるんだけど」

私はさっきの佐藤紀夫さんの顔を思い出しながら言った。

「あの人は、そういう感じではなかったよね」

サキさんもうなずいた。

「だけど、佐藤さんの気持ちもわかるな」

サキさんが首をかしげて私を見た。

「だって、サキさん、素敵だもの」