きみに会える場所~空の上ホテル~

「情報?」

「ああ。食事作るにしても、その人の背景を知っておいた方がいいだろ? どんな味付けが好きなのかとか」

「そんなことまで調べるんだ」

「当然。その人が食べる最後の食事なんだ。うまいって思うもの、食べさせてやりたいだろ?」

なるほど。

「ちょっと場所換われ」

レイはパソコンの前に立つと、パタパタとキーボードを叩いた。マウスをクリックすると、少し離れたところにあるプリンターから紙が二枚出てきた。

「はい」

紙をレイに渡した。レイは無言でささっと目を通していった。何か、プロって感じ?

二枚目の紙を見た瞬間、レイの顔がこわばった。

「・・・・・・レイ?」

レイは二枚目の紙をぐしゃっと握りつぶすと、そのままフロントを出て行った。

私の声なんて全く聞こえてないみたい。

ほんの少し寂しかったけど、それよりも好奇心の方が強かった。レイの顔を能面みたいにしたのは、一体何だろう。

私はレイがそのままにしていったパソコンの画面を見た。

「印刷」にカーソルがあったままだ。

ちらっと左右を確認した。誰もいない。

よし。

私はマウスをクリックして印刷をした。

ガーという音がして、プリンターから紙がプリントアウトされてゆっくり出てくる。

サキさんがこっちへ戻ってくるのが見えた。

早く、早く。フロントでもない私が画面をいじってるのがわかったら、サキさんが気を悪くするかもしれない。

私ははらはらしながらプリンターを見ていた。