きみに会える場所~空の上ホテル~

「よし、終わり」

男はばんそうこうを私のひざに貼ると立ち上がった。上着の襟をびしっと整える。

「あ、ありがとう。えーと」

男は私を見下ろして言った。

「レイ。さっき聞いてただろ?」

「ありがとう。・・・・・・レイ」

声がうわずる。私も呼び捨てしていいんだ。うれしくて舞い上がっちゃうよ。勢いに乗って話しかけた。

「ところで、何か困ってること、ない?」

レイはけげんな顔をする。

私はホテルからどうしても出られないことを話した。

「きっと私は誰かに呼ばれてここに来たんだと思うの。この世界で困ってる誰かを私が助けられたら、戻れると思うんだ」

「助ける?お前が?」

鼻で笑われてムキになって言い返した。
「お前お前言わないで。私には桜木美緒っていう立派な名前があるんだから」

「はいはい、わかったわかった。とにかく美緒を呼んだのがおれじゃないことは確かだ。他の奴に聞いてみろよ」

じゃあな、とレイは帰って行った。

ドアがパタンと閉まった。

「ふーっ」

胸に手をあてて大きく深呼吸する。

美緒って呼ばれて、どぎまぎした。一瞬で脈拍が急上昇したよ。だけどその後の一言で、気分は急降下。めちゃくちゃなジェットコースターに乗ってるみたい。