きみに会える場所~空の上ホテル~

レイは、箸をテーブルにたたきつけるように置いた。

一瞬にして空気が止まった。

「うるせーな。料理教室はしばらく休みだ」

カナタさんも湯飲みを置いた。

「なんで?」

「なんででも」

カナタさんの言葉にかぶせるようにしてレイが言った。

私は下を向いた。涙がじんわりと浮かんで視界がゆがんだ。

レイ、すごく怒ってる。・・・・・・そりゃそうだよね、私が酢の物の味付けを間違ったせいで、文句言われたんだもの。

だけど、料理教室をお休みにするなんて。

私、次からは絶対にちゃんと作れるように頑張るから。勝手に適当に作ったりしないから。

だからお願いだよ、レイ、料理教室やめるなんて言わないで。

それとも・・・・・・

そんなに、私のこと、嫌いなの・・・・・・?

頭がしびれてじんじんしてきた。カナタさんの声がぼんやり遠くから聞こえてきた。

「ふーん。支配人としては、美緒ちゃんに早く料理覚えてもらって、料理当番のローテーションに入ってもらおうと思ってたんだけどなあ」

レイはふてくされたようにあさっての方向を向いている。カナタさんは肩をすくめた。

「まあいいや。四人バージョンのローテーションは組むよ、支配人として。そんで、美緒ちゃんの分はレイに入ってもらうから」

「なっ・・・・・・!」

「なんでって? きみは美緒ちゃんの料理の先生。そしておれは支配人だから」

レイは思いっきりカナタさんをにらんだけど、カナタさんはそしらぬ顔をして味噌汁を飲んだ。

サキさんは二人を交互に見ると、小さくため息をついた。

私はうつむいて夏野菜の煮浸しを食べた。サキさんが作ってくれたんだから、きっとおいしいんだろうけど、もう味なんてわかんないや。

涙をこぼさないだけで精一杯だ。

四人とも無言のまま、朝食の時間が過ぎていった。