きみに会える場所~空の上ホテル~

「この酢の物って・・・・・・」

「そうよー。美緒ちゃんが昨日作ってくれたんでしょ? 冷蔵庫開けたら入っててびっくりしちゃった」

今日の料理当番のサキさんがうふふと笑った。

「料理教室の効果が早速出たのかな。ね、レイ?」

サキさんが意味ありげにレイを見た。そっちをまだ見られなくて、頬がかーっと熱くなった。

「・・・・・・レイ?」

サキさんの声に思わずレイを見た。レイは箸にご飯をのせたまま、じっとしていた。

「レイ、どしたの?」

カナタさんも声をかける。みんなの視線に気づいたレイがはっと顔を上げた。

「あ、悪い。考え事してた」

そう言ってご飯を口に運ぶ。そしてまた、じいっと固まってしまった。視線は夏野菜の煮浸しに据えられていたけど、目は何も見ていない。

カナタさんはきゅうりの酢の物に箸をつけた。

「美緒ちゃんが作った酢の物、いただきまーす」

塊でぱくりと食べる。その瞬間、カナタさんの端正な顔が苦悶にゆがんだ。

「・・・・・・すっぱ!!! 美緒ちゃん、味見した?!」

私はううん、と首を振った。

「酢の物って、酢につかってるから酢の物なんですよね?」

サキさんは、酢の物に伸ばしかけていた箸を箸置きに置いた。

「み、美緒ちゃん。それは大きく間違ってるわよ」

カナタさんはひいひい言いながら、お茶を飲んでいる。

「うわー、舌がぴりぴりする。・・・・・・レイ、料理教室、ちゃんとやってんの?」

涙目でカナタさんが私ではなくレイに抗議している。

「ご、ごめんなさいっ、カナタさん」

私はぺこりと頭を下げた。

ぴくっとレイが反応した。