きみに会える場所~空の上ホテル~

ああ、寝坊した。

私は飛ぶように廊下を走っていた。

昨日はうまく眠れなかった。「どうしてレイは私にキスをしたのか?」という難問に悶々としていた。

外がほんのり明るくなってきたなあ、とぼんやりと思っていたことまでは覚えてる。

食堂は調理室の隣にある。調理室を通り過ぎる時、胸がうずいた。

食堂の開け放した戸口から、みんながテーブルについているのが見えた。レイの背中が見えた。

私は食堂に駆け込んだ。

「おはようございます!」

ちっとも元気じゃないのに、力いっぱい走ってきたから、勢いで大声が出た。

「おはよー。・・・・・・どしたの、その顔?!」

サキさんの笑顔が固まる。

「えっ?」

「目がギンギンに血走ってる」

「あ。その、昨日はなんとなく夜更かしをしちゃって・・・・・・」

「ダメよー、若いからって油断しちゃ。睡眠不足はお肌の大敵なんだから」

私はあいまいに笑いながら席に着いた。向かいにいたレイの方は見なかった。どんな顔したらいいのかよくわからなかった。

まだ少し眠そうなカナタさんがもぐもぐと言った。

「じゃ、全員揃ったところで、いただきます」

「いただきます」

テーブルの上には、ご飯、大根と水菜と揚げの味噌汁、ネギ入り納豆、夏野菜の煮浸し、きゅうりの酢の物が並んでいた。