きみに会える場所~空の上ホテル~

きっとあの夜、レイは小さな子供で、私の手をお母さんの手だと思ったんだね。ごめんね、お母さんじゃなくて。

もう謝ることしかできない。私は両手の自由を奪われたまま、じっとレイを見上げた。

「ごめんね、本当にごめんね」

「・・・・・・お前に見られるとはなあ」

レイのちょっと傷ついたような表情に、じわじわと心がへこんでいく。

そうだよね。親代わりのサキさんやカナタさんならともかく、部外者の私にあんなとこ見られたくないよね。大きなお世話だよね。

「・・・・・・ごめんなさい」

涙が頬を伝って落ちていく。自分の導き出した解答にますますへこんでく。部外者だ部外者だ部外者だ・・・・・・。

「・・・・・・何でお前が泣くんだよ」

レイはきゅっと唇をすぼめた。

「なあ、泣くなって」

そんな優しい声で言われたら、ますます涙が出る。何でだろう。レイが怒ってないから? ほっとして涙が出るのかな。

「泣くなよ、美緒」

名前で呼ばれた。びっくりして顔を上げる。レイのまっすぐな視線がすぐ先にある。握られた手首が熱い。

レイの目は少し不機嫌そうだ。私がいつまでもぐずぐずと泣き止まないからかな。

「もう、泣くな」

「ご、ごめんね、レイ。本当にごめ・・・・・・」

いきなり口をふさがれた。唇を割るようにして何かが押し入ってくる。

「やっ・・・・・・、ん・・・・・・っ」

こわくなってもがいた。でも自由になるどころか、ますます強く壁に押し付けられた。

レイが覆いかぶさるようにしてキスをした。気が遠くなるような長いキスを。