きみに会える場所~空の上ホテル~

どきーん。ってしたけど、何とか笑い声を上げることに成功した。

「何それ? 何で私がレイのところに? そもそも、部屋がどこかも知らないし」

「・・・・・・だよな」

レイはつぶやくと、私の手を離した。まだ心臓がどきどきしてる。

「この前の朝、変なことがあったんだ」

「へえ、どんなこと?」

「起きたら、ぬいぐるみが添い寝してた」

レイの驚く姿が目に見えるようで、私はくすくすと笑った。

「そりゃびっくりするよねー。いきなり隣にクマが寝てたら」

レイが私をじいっと見つめた。その食い入るような視線に少したじろいだ。

「・・・・・・おれ、お前に言ってないよな」

「何を?」

「おれんとこにあるぬいぐるみが、クマのぬいぐるみだってこと」

・・・・・・。

「え、えーと、それは・・・・・・サキさんに聞いたんじゃなかったかな」

レイは無言のまま一歩こっちに近づいた。ち、近すぎるよ。私は一歩下がった。

じりじりとレイが近づいてくる。私は少しずつ後ろに下がったけど、壁際に追い詰められた。もう下がれない。

レイが私におおいかぶさるようにして私を見下ろした。やっぱり何も言わない。ちょっとこわい。

私の体を壁と自分の間にはさむように、レイが壁に手をついた。もう、逃げられない。

「・・・・・・お前だったんだな」

レイのつらそうな顔を見ていると、あの夜の寂しそうな声が頭によみがえってきた。

「ご、ごめんね、勝手なことして」

思わず目に涙が浮かんだ。レイが私の右手をとって壁についた。

「この手の感触、よく覚えてる。・・・・・・あれは、夢じゃなかったんだな」

続けて左手首を持って壁につく。

「まさか、お前とは思わなかったけど」

レイの目に浮かんだ表情は、悲しいような寂しいような、それでいて優しいような不思議なものだった。