「レイは覚えてないかもしれないけど、君の母さんは君を産んですぐにいなくなった訳じゃない。住み込みで働いて、君を育てていたんだ」
カナタさんは顔を上げてレイを見た。
「君の母さんは、とても働き者で、いい従業員だったよ。明るくてほがらかで優しくて、一緒にいるとこっちまで優しい気持ちになれた」
カナタさんは懐かしそうな顔をしていた。
「君の母さんと、君、奈美さん、サキとおれ。五人でアットホームなホテル経営をしてたんだ。君の母さんのフロントは、お客様にもとても好評だった。君の母さんが来てから三年が過ぎた頃、小さなお客様がやってきた。五歳の男の子と二歳の女の子の兄妹だ」
レイがはっと顔を上げた。
「ヒカルとアカリ・・・・・・?」
カナタさんがうなずく。
「そう。君たち三人はよく一緒に遊んでた。ヒカルとアカリは君の母さんによくなついてたよ。なかなか次のステップに進めないぐらいに」
カナタさんが肩をすくめた。
「そりゃそうだよね、幼い兄妹二人きりでこんなところへ来ちゃってさ。心細くて泣きそうな時に、フロントで君の母さんが迎えてくれた。ほんとの母さんみたいに思うのも無理ないさ。実際、アカリは君の母さんのことを『ママ』って呼んでたし」
私はカナタさんの話を聞きながら、レイの小さい頃のことを想像していた。
仲良しの三人組のおちびさんがいて、優しいお母さん、かっこいいお兄さんとお姉さん、頼りになるおばあちゃん。
「何かすごく楽しそう・・・・・・」
思わず口を挟んだ私に、カナタさんがほほえんだ。
「そうさ。すごく楽しかったよ。毎日がキャンプみたいなもんさ。だけど、そういう生活にもいつかは終わりが来る」
カナタさんの表情が翳った。
「フロントをしてたレイの母さんが、お客様の予約リストにある人の名前を見つけた。ヒカルとアカリの母親の名前だ」
カナタさんは顔を上げてレイを見た。
「君の母さんは、とても働き者で、いい従業員だったよ。明るくてほがらかで優しくて、一緒にいるとこっちまで優しい気持ちになれた」
カナタさんは懐かしそうな顔をしていた。
「君の母さんと、君、奈美さん、サキとおれ。五人でアットホームなホテル経営をしてたんだ。君の母さんのフロントは、お客様にもとても好評だった。君の母さんが来てから三年が過ぎた頃、小さなお客様がやってきた。五歳の男の子と二歳の女の子の兄妹だ」
レイがはっと顔を上げた。
「ヒカルとアカリ・・・・・・?」
カナタさんがうなずく。
「そう。君たち三人はよく一緒に遊んでた。ヒカルとアカリは君の母さんによくなついてたよ。なかなか次のステップに進めないぐらいに」
カナタさんが肩をすくめた。
「そりゃそうだよね、幼い兄妹二人きりでこんなところへ来ちゃってさ。心細くて泣きそうな時に、フロントで君の母さんが迎えてくれた。ほんとの母さんみたいに思うのも無理ないさ。実際、アカリは君の母さんのことを『ママ』って呼んでたし」
私はカナタさんの話を聞きながら、レイの小さい頃のことを想像していた。
仲良しの三人組のおちびさんがいて、優しいお母さん、かっこいいお兄さんとお姉さん、頼りになるおばあちゃん。
「何かすごく楽しそう・・・・・・」
思わず口を挟んだ私に、カナタさんがほほえんだ。
「そうさ。すごく楽しかったよ。毎日がキャンプみたいなもんさ。だけど、そういう生活にもいつかは終わりが来る」
カナタさんの表情が翳った。
「フロントをしてたレイの母さんが、お客様の予約リストにある人の名前を見つけた。ヒカルとアカリの母親の名前だ」

