「レイ、ひどくうなされてたかい?」
私は無言でうなずいた。
「そっか。やっぱりね。奈美さんがいなくなっちゃったからなあ」
「奈美ばあちゃん?」
「奈美さんは、レイが生まれた時からここにいたからね」
・・・・・・。
話がよく見えない。
ここは、地上で亡くなった人が、いわば自分の死を受け入れて次へ進むための中間地点のはずだよね。
カナタさん、一体何を言ってるんだろう。
カナタさんは、私の視線に気づいて、ああ、とつぶやいた。
「そっか。美緒ちゃんは知らなかったっけ。レイはこのホテルで生まれたんだよ。昔、産婆をやってた奈美さんがレイを取り上げたんだ」
私は目をまん丸にしてカナタさんを見つめていた。レイが、ここで生まれた?
カナタさんは机にもたれかかって、くすりと笑った。
「あの時はおれもサキも焦ったよ。このホテルで赤ん坊が生まれるなんて初めてのことだったから。二人して奈美さんに言われるままにタオルやら洗面器やら持って走り回ってた」
カナタさんはどこか遠くを見つめていた。
「レイの母親はさ、どうしてもレイを産んでやりたかったんだろうね。それが心にかかってて彼女は次のステップに進めなかった。そしたら陣痛が起こった。そしてレイが生まれた」
私はレイの寝言を思い出していた。「行かないで、お母さん」という切ない声を。
「レイのお母さんは? 今どこにいるんですか?」
「さあ。ここから上がって行ったから、今はどうしてるかなあ」
「上がって行ったって・・・・・・奈美ばあちゃんみたいにエスカレーターで?」
「そうだよ」
「レイを置いて?!」
「ああ」
私はかっとなって叫んだ。
「そんなの無責任じゃないですか。残された子供がどんなに寂しいか、お母さんならわかってるはずでしょう」
カナタさんに言っても仕方のないことなのに、私はカナタさんに怒りをぶつけていた。
「産んだら満足して自分だけ次のステップに進むなんて、ひどいじゃないですか。そんなの子供を捨てたのとおんなじでしょ?!」
そんなの、レイがかわいそうだよ・・・・・・。
私は無言でうなずいた。
「そっか。やっぱりね。奈美さんがいなくなっちゃったからなあ」
「奈美ばあちゃん?」
「奈美さんは、レイが生まれた時からここにいたからね」
・・・・・・。
話がよく見えない。
ここは、地上で亡くなった人が、いわば自分の死を受け入れて次へ進むための中間地点のはずだよね。
カナタさん、一体何を言ってるんだろう。
カナタさんは、私の視線に気づいて、ああ、とつぶやいた。
「そっか。美緒ちゃんは知らなかったっけ。レイはこのホテルで生まれたんだよ。昔、産婆をやってた奈美さんがレイを取り上げたんだ」
私は目をまん丸にしてカナタさんを見つめていた。レイが、ここで生まれた?
カナタさんは机にもたれかかって、くすりと笑った。
「あの時はおれもサキも焦ったよ。このホテルで赤ん坊が生まれるなんて初めてのことだったから。二人して奈美さんに言われるままにタオルやら洗面器やら持って走り回ってた」
カナタさんはどこか遠くを見つめていた。
「レイの母親はさ、どうしてもレイを産んでやりたかったんだろうね。それが心にかかってて彼女は次のステップに進めなかった。そしたら陣痛が起こった。そしてレイが生まれた」
私はレイの寝言を思い出していた。「行かないで、お母さん」という切ない声を。
「レイのお母さんは? 今どこにいるんですか?」
「さあ。ここから上がって行ったから、今はどうしてるかなあ」
「上がって行ったって・・・・・・奈美ばあちゃんみたいにエスカレーターで?」
「そうだよ」
「レイを置いて?!」
「ああ」
私はかっとなって叫んだ。
「そんなの無責任じゃないですか。残された子供がどんなに寂しいか、お母さんならわかってるはずでしょう」
カナタさんに言っても仕方のないことなのに、私はカナタさんに怒りをぶつけていた。
「産んだら満足して自分だけ次のステップに進むなんて、ひどいじゃないですか。そんなの子供を捨てたのとおんなじでしょ?!」
そんなの、レイがかわいそうだよ・・・・・・。

