きみに会える場所~空の上ホテル~

あまりにもレイの声が悲しそうで、涙がこぼれそうになった。

私はレイの髪の毛をなでながら、馬鹿みたいに小声で繰り返した。

「どこにも行かないよ、レイ」


私はそっと髪の毛をなで続けた。

レイが安心して眠れますように。

レイが悪夢から解放されますように。

レイが何も考えずにぐっすり眠れますように。


レイは私の手をぎゅうっと握ったまま、すうすうと寝息を立て始めた。

私はずっと髪の毛をなで続けた。



手がしびれてきた。ひざもじんじんする。

今、何時かな。目覚まし時計を見てぎょっとした。

1時30分。あれから一時間以上も経ってる。

レイはぐっすり眠っている。


私はそうっと立ち上がった。ひざががくがくした。

私の右手はまだレイの手の中にある。

私は精一杯体をのばして、目覚まし時計の向こうにあるクマのぬいぐるみをつかんだ。

目覚まし時計に当たらないようにそっと持ち上げる。

レイが目を覚まさないように、ゆっくりゆっくり動く。

少しずつレイの手から手を引き抜くと、代わりにクマのぬいぐるみの右手を差し入れた。


また朝にね、レイ。


私はレイの部屋をそうっと出ると、音がしないように時間をかけてドアを閉めた。