きみに会える場所~空の上ホテル~

暗いのにもだいぶ慣れてきた。

私は手をレイの髪の毛に置いたまま、そろそろと辺りを見回した。

椅子の背にかかっているのは、恐らくコックコート。ぼんやりと白っぽい。

ベッドのサイドテーブルには、目覚まし時計が三つ。蛍光塗料を塗った針はどれも0時15分をさしている。

その向こうに見えるのは・・・・・・何だろう?

思わず首をのばして確かめた。

それは、どうやら高さ三十センチくらいのクマのぬいぐるみだった。

この部屋に、というかレイのキャラクターにはあまりにも合わなくて、何度も目を凝らして確かめた。

「ん・・・・・・」

レイがもぞもぞと動いた拍子に掛け布団がめくれた。


!!!


レイの上半身があらわになった。白い肌がぼうっと浮き上がって見える。


し、刺激が強すぎる。胸がどきどきして思わず目をそらした。

もし今レイが目を覚ましたら、私、ストーカー決定だ。


サイドテーブルの目覚まし時計をもう一度見た。0時18分。もう時間も遅いし、レイも気持ちよさそうに寝てるし、そろそろ戻ろう。

「じゃあね、レイ」

小さくつぶやくと、最後にちょこっと髪をなでた。名残惜しいけど、そろそろ行くね。



髪からそっと指を外した途端、レイの手が私の手をぎゅっとつかんだ。レイが叫ぶ。


「行かないで!」

思わずレイを見つめたけど、レイはぎゅっと目をつぶったままだ。また苦しそうな顔になっている。

悪い夢を見てるの? レイがつらそうだと私もつらいな。

あいてる方の手でレイの髪をそっとなでながら、ベッドの横にひざまずいて顔をのぞきこんだ。


「・・・・・・行かないで、お母さん」


閉じられた目から涙が一筋流れた。