きみに会える場所~空の上ホテル~

部屋の中は薄暗かった。家具の配置が私の部屋と同じだということは、何となく影でわかった。

「ううううう」

レイの低いうめき声が聞こえた。

私はそっと部屋に入った。


レイはベッドに横になっていた。掛け布団に首まですっぽりくるまって壁の方を向いている。

私は小声でささやいた。

「レイ、大丈夫?」




返事はない。


体の具合でも悪いのかな。


顔を見て確かめようとベッドに近づいた。


くるりとレイが体の向きを変えた。


!!!


レイの顔が目の前にあった。暗闇に目がなれてきていたから、レイの切れ長の目が閉じられているのがわかった。

私は部屋に入ってきた目的も忘れて、どきどきしながらレイの寝顔を見ていた。

閉じた目に前髪が少しかかっている。少しだけ開いた唇からすうっと息がもれた。

かわいいなあと思って見入っていたら、眉間にしわが寄った。

「う」

唇がぎゅっとすぼまった。

「うううううう」

目を力いっぱい閉じている。苦しそうな表情が浮かぶ。

「うううううう」

何か嫌な夢を見ているんだ、きっと。私は制服のポケットからハンカチを出すとレイの頬を流れる汗をぬぐった。ついでに頬にはりついた髪の毛を手で直す。

気のせいかな。レイの眉間のしわが少しゆるんだみたい。うなり声も止まった。

私は気をよくして髪の毛をそっとなでた。

どうか今だけは絶対に目を覚まさないで下さい、と思いながら。こんな場面見つかったら、どんなに怒るか。ただでさえ、はなむけのキスのことでレイの怒りを買ってるのに。

・・・・・・思い出したらへこむから、今は思い出さないようにしよう。泣いたり悩んだりするのは、自分の部屋に帰ってから。


私は髪の毛をそっとなで続けた。周囲にしわが寄るくらいぎゅっと閉じられていたレイの目からふっと力がぬけた。すうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえた。

か、かわいい。

私はどきどきしながら寝顔を見つめていた。