きみに会える場所~空の上ホテル~

手提げの中に服を押し込んだおかげで、ペンケースががしゃがしゃ音を立てない。

我ながらナイスアイディアだったなあ。

気をよくして歩いていると、突然廊下が真っ暗になった。

な、何?!

一瞬、パニックになって声を上げそうになったけど、声を出すことへのためらいの方が勝っていた。

なんといっても、ここまでそっと歩いてきたんだし。

それに確か・・・・・・カナタさんのノートに消灯について書いてあったっけ。

私はさっきノートをぱらぱらとめくっていた時のことを暗闇の中で思い出していた。

「消灯について:廊下もフロントも全て夜の12時には電気を消すこと。歩き回る時は部屋の備え付けの懐中電灯で。エコにご協力下さい」

みたいな感じだった気がする。

原因がわかってみると、真っ暗闇も特にこわくはなかった。ここには不審者もいないし。

それより、もう12時だってことの方が重大だった。まだお風呂にも入ってないのに。

ぐずぐずしてたら、寝る時間がなくなっちゃう。

私は早歩きで廊下を歩いた。



しばらく歩いて気がついた。

真っ暗だから、部屋のプレートが見えないってことに。

私、さっきからどのくらい歩いたっけ?!

後ろを振り返ってみた。真っ暗。

前を向いた。同じく真っ暗。

あ、ダメだ。こんなことしてたら自分がどっちから歩いてきたのかわからなくなっちゃう。もう後ろは振り返らないようにしよう。

私の部屋からロッカールームまではかなり距離があった。ロッカールームを出てからここまでは、まだそれほど遠くないと思う。

よし、こっちが前。私の部屋はとりあえずこっち方向にあるはず。

私はそっと手をのばして、左側の壁にふれた。壁にさわりながら進もう。そして部屋のドアにさわったら、プレートを探して何とか文字を読み取ってみよう。

私は再びそろそろと歩き始めた。