きみに会える場所~空の上ホテル~

私は力なくうなだれた。

「・・・・・・間違ってない、です」

レイの言ってることは、正しいと思う。私がどうこう言える立場ではないこともわかった。だって、彼女たちにはもう他に何もないんだもの。


私は深く息を吸った。勢いをつけて頭を下げた。

「ごめんなさい! いいがかりつけて」

そのままの姿勢で続ける。

「レイが女の子に見境なく手を出すようなちゃらんぽらんな人かと思って、勝手にがっかりしたの」


勝手に誤解して勝手にがっかりして・・・・・・恥ずかしい。顔を合わせられない。




しばらくして、レイがため息をついた。

「もういいから。顔上げろ」


私はおそるおそる顔を上げた。レイの表情はまだ硬かったけれど、私の目を見てくれた。

「本当に、ごめんなさい」


レイは少しだけ笑うと、やれやれと首を振った。

「全く、どうして女ってのは、ちらっと見ただけでそこまでいろいろ考えるんだ?」

「・・・・・・ごめんなさい」


他に言葉が見つからない。


「だからもういいって。おれ、仕込みしなきゃいけないから」

レイはそれだけ言うと、くるりと背を向けた。


これ以上何か言っても、邪魔にしかならない。

私は食器を手早く拭いて棚にしまうと、調理室をそっと出た。


ドアがしまると途端に涙がにじんだ。


一体、何で自分が泣いているのかよくわからなかった。

レイがひどい男じゃなかったから安堵したのか。

余計なことを言って怒らせてしまったことを後悔しているのか。

ただただ怒鳴りつけられたことでショックを受けているのか。

いろんな感情がごっちゃになっているみたい。



レイの言っていることは100%正しい。


でも。


彼の行動の意味を知った今でも、レイが誰かとキスしてるところなんて見たくない。

だから、せめて、エレベーターには近づかないようにしようと思う。

そしてレイには今まで通り普通に話しかけるようにしよう。レイが許してくれてなくても。

ここでぎくしゃくしてしまったら、みんなにも迷惑をかけてしまう。それだけは絶対に避けないと。私がここにいる意味がなくなっちゃう。