きみに会える場所~空の上ホテル~

レイは最初戸惑っているようだったけど、だんだん表情が険しくなってきた。

「お前こそ何様のつもりだよ。今日入ってきたばっかりの新人が、えらそうに指図すんな」

レイはじゃがいもをだん、と流しに置くと、体ごと私に向き直った。

いつものように腕組みをすると、調理台をはさんで私をじっとにらみ返した。

「いいか。ここへ若くして来た子たちは、来たくて来た訳じゃないんだ。事故や病気で、不意に人生が終わっちまったんだ。中にはそういう不運を受け入れて、落ち着いて次のステップへ進める子もいるけど、戸惑って途方に暮れてる子がいっぱいいるんだよ」

レイのほほは、怒りのために少し紅潮していた。目はますますきつくつりあがり、迫力を増していた。

「そんな不安でいっぱいの子が、弱々しいながらも何とか次のステップへ進もうとしてる時に、はなむけのキスを贈ることがそんなにいけないことかよ」



はなむけのキス・・・・・・。

「おれなんかのキス一つで、『恋愛も何もしないままにここに来ちゃったけど、私もう満足です』って言って、涙浮かべて上へ行く子がいるんだよ」



ああ、だからエレベーターの前でキスしてたのか・・・・・・。

「特に何の技量もないおれが彼女たちにできることはそれぐらいしかないだろ? おれの言ってること間違ってるか?!」