「美緒ちゃん・・・・・・」

カナタさんが、一歩足を踏み出した途端、ピルピルピルピルと携帯が鳴った。

「もしもし、おれ」

「・・・・・・うん、わかった。すぐ行く」

ピッ。

「美緒ちゃん、行こう」

「え? どこへ?」

「お客さんのお見送り」

カナタさんは有無を言わさず私の手をとると、走り出した。

果樹園を抜け、野菜畑を抜け、ホテルの中へ。

人がこんなに早く走れるなんて。感覚的には、間違いなく世界新記録だ。