きみに会える場所~空の上ホテル~

空の上ホテルまでは、あっという間だった。来る時の道のりが嘘みたいだった。

「さあ、東条さん、お入り下さい」

「あんたらは? 入らんのかい?」

茶封筒を胸に抱えた東条さんが不思議そうにたずねた。

「われわれはホテル関係者ですので、ここからは出入りできません」

「そうかい。世話になったのう」

東条さんは、分身さんと私にそれぞれ握手を求めた。

こんなお年の人と握手をするなんて初めてだったから、ちょっと緊張した。

東条さんが回転扉の中に消えていくのを確かめてから、私と分身さんは歩き出した。