「美緒ちゃん、ちょっと下がってて」
分身さんは、芝生の縁にひざまずいて手をのばした。
「東条さん、つかまって下さい」
私ははらはらしながら、少し離れたところで分身さんの後ろ姿を見ていた。やりとりは風が邪魔をして聞こえない。
分身さんの腕に力が入っていた。足も踏ん張っている。
やがてつるっとした坊主頭が見えた。分身さんの手をしっかりと握って東条茂人さんが上がってきた。
二人はどさりと芝生の上に座り込んだ。私はその横にへたり込んだ。
よ、よかったあ。いくら亡くなってるとはいえ、こんなところから落ちたらきっと大変なことになってただろう。芝生の縁から下をのぞいた時の気持ちを思い出すと、体から力が抜けた。
「大将、ありがとうよ」
東条茂人さんが、茶封筒から何やら取り出すと、分身さんの手のひらにぽすんと置いた。
お金だ。重ねた一万円札を二つに折って輪ゴムでとめてある。・・・・・・五枚以上はあるな、きっと。
私がしげしげと観察していると、分身さんが言った。
「いりませんよ」
「まあそう言わんと。どうせあの世へ行ったら、お金なんて使えないんじゃろ?」
「ええ、多分」
「ならここで有意義に使った方がいいじゃないか。え? そうは思わんか? ん?」
東条茂人さんは、同意を求めるみたいに私を見た。
分身さんは、芝生の縁にひざまずいて手をのばした。
「東条さん、つかまって下さい」
私ははらはらしながら、少し離れたところで分身さんの後ろ姿を見ていた。やりとりは風が邪魔をして聞こえない。
分身さんの腕に力が入っていた。足も踏ん張っている。
やがてつるっとした坊主頭が見えた。分身さんの手をしっかりと握って東条茂人さんが上がってきた。
二人はどさりと芝生の上に座り込んだ。私はその横にへたり込んだ。
よ、よかったあ。いくら亡くなってるとはいえ、こんなところから落ちたらきっと大変なことになってただろう。芝生の縁から下をのぞいた時の気持ちを思い出すと、体から力が抜けた。
「大将、ありがとうよ」
東条茂人さんが、茶封筒から何やら取り出すと、分身さんの手のひらにぽすんと置いた。
お金だ。重ねた一万円札を二つに折って輪ゴムでとめてある。・・・・・・五枚以上はあるな、きっと。
私がしげしげと観察していると、分身さんが言った。
「いりませんよ」
「まあそう言わんと。どうせあの世へ行ったら、お金なんて使えないんじゃろ?」
「ええ、多分」
「ならここで有意義に使った方がいいじゃないか。え? そうは思わんか? ん?」
東条茂人さんは、同意を求めるみたいに私を見た。

