イルルに起こされてから一時間後。

俺とリーヴェは加工屋にいた。

「んでそれで足りるの?」

メガネの店主に向かって
ため口で訊ねるリーヴェ。

「問題ないんじゃね?」

店主も砕けきった様子だ。

「でさぁ、これを取ってきたってことは魔族は退治したんだよね?」

さも当然のように訊くメガネ店主。

「俺たちが倒せって言われたの魔王だけだし。」

さも当然のように答えるリーヴェ。

「えー?」

メガネ店主は不満そうだ。

「普通勇者ってのは頼まなくても町の奴らが困ってたら解決してくれるもんだと思うんだけど。」

「あのさぁこっちも命かかってんだよね。」

なんかリーヴェに会話させてると
俺の印象がウナギノボリに
悪くなっていく気がするんだが?!

俺はリーヴェとメガネ店主の間に割って入ると

「とりあえず飛行車を手に入れるのが先決だと思いまして。」

リーヴェが悪くした印象を回復すべく
鉱山の魔族を
退治するつもりで会話してみる。

メガネ店主は少し上機嫌になり
退治に行くなら、と
古びた銃をくれた。



なんか、絶対退治しなきゃだめな流れになった気がする。

俺は店を出てから
再度ため息を吐いた。

ため息を吐いたら幸せが逃げるって?

もう俺の人並みの幸せは
間違いなく30億光年の彼方くらいに
逃げちゃったからな。

いまさら気にしないさ。