俺が泣いても、ラウザは生き返らない。

全く何も思わないわけではない。
顔見知り程度とはいえ、
知人が目の前で死んだ…殺されたのだ。

冷静でいられるわけがない。

しかし、今は、
ラウザの死に際に現れた
こいつの素性を確認するべきだ。

敵対する者ではないとは限らない。

しかし、
ラウザが言っていた名前に覚えがあるので、
見当はついている。

「ラウザの弟子の、魔族狩りのイブナク?」

「うん。」

ラウザの弟子という表現が
正しいかどうかはわからないけど、
彼は肯定した。

「滅魔術最強の滅魔を使える、イブナク?」

なんで、今頃出てきたのか。
俺たちの戦闘を、傍観者として、
遠目から見ていたのだろうか?

加勢もせず?手も出さず?

目の前の相手に対する不審は募っていく。

「色々、聞きたいことも、言いたいこともあるかもしれないけど、それは僕も同じ。」

イブナクから俺に、
殺気を込めた視線が向けられた。

「喧嘩なら後からでもできるから、詳しく話聞こうぜ。」

幼い、かわいらしい声に、
似合わない乱暴な言葉が発されて、
俺は声の発生源を見る。

淡い赤…ピンク…?の髪の幼女がいた。
これも魔族狩り?

「俺はライアス。そっちは?」

名前を名乗るくらいなら
害はないか…?

「ぽこぽんだ。」
「ナターシャ。」

リーヴェとレグナくんは
遠目でこちらを眺めているだけで
近づいてこようとしない。

イルルは、わんわん泣き続けるだけで
名乗る気が砂粒ほども存在しないのが
よくわかった。

「見たところ、そっちも満身創痍?ってところか。ちょっと落ち着こうぜ。」

ライアスと名乗る、言葉遣いの悪い幼女は、
壁に穴が開いて、
使い物にならなくなっている、
旧校舎の食堂を指差した。