「俺たちはただ素材が欲しかっただけで。」

美形の魔族は俺の姿をじろじろと眺める。

「ふん、少々年をとっているが勇者か。」

その言葉に周りの魔族が反応する。
戦いは避けられない…か?!

「お袋は下がってろ!」

イルルが飛び出し、
美形魔族の腹を蹴る。

相手がうずくまった隙に、
どこに隠し持っていたのかわからないけど
短剣を魔族の喉にあてる。

「お前らがかかってきたらこいつの喉から血が出るぞ!」

イルルは、
既にどちらが悪いのかわからない
見事な悪役っぷり。

「卑怯者!」

「魔族に言われたくねぇや!」

イルルは魔族を人質に取ったまま
じりじりと、出口の方へ向かう。

イルルについて外に向かうのは
俺、ツキヨさん、リーヴェの順だった。

こっちが人質をとるのは
有利かもしれないけど
ツキヨさんを人質に取られると
面倒だし。



俺、勇者のはずなんだけど
見事にチンピラ御一行様になっちゃったな。

エクトプラズム入りの
ため息をつきながらも、なんとか
4人とも出口から脱出することができた。