「魔力の香りがするわね…。」

少し離れたところから声をかけられた。

昨日の、恐いくらいの色気の美女だった。
その人は俺を真っ直ぐ見つめ、目を逸らさない。
俺も、何故か目が逸らせない。

ただ単に美人だから
逸らせないってわけじゃなくて
なんとなく、俺たちを、
餌として見ているような気がしたんだ。

「えっと…。」

俺は腹の底から声を絞り出す。
たった一言を発するために、
途方もない労力が必要だった。

「わざわざ出てきてくれるなんてね。」

ラウザは美女相手に
殺気を込めた冷たい視線を投げる。

レグナくんがぶつぶつと小さな声で
何かつぶやき始めた。

それはいいけど、レグナくんの吐く息が
首にかかって、くすぐったい。

そんなことを考えていたら。

「ディバイン・アローっ!」

レグナくんはいきなり、
美女に対して魔法を使った。

無数の光の矢が美女に向かって飛んでいく。
どこからどう見ても攻撃魔法である。