勇者34歳

「レグナ、お前は待ってろ。」

強引に話を進めるイルル。

「嫌ですよ。ボクの仇はボクが討ちます。イルルさんに仇討ちをしてもらうとしたら、それはボクが死んだときです。」

「レグナくん、そんなことを言うもんじゃない。」

俺はレグナくんを諭した。

「それに…。」

レグナくんが泣きそうな顔をする。

「ボクは、また、勇者に置いていかれるんですか?」

「バカか?何を言っている?帰ってくるに決まってんだろ。」

「そうじゃないんです。ボクがホントに嫌なのは…。」

この学園に潜んでいる魔族が
とてもとても強いのは、わかっている。

レグナくんは、多分、
万が一、俺たちが戻らなかった時を
心配しているのだ。

でも、それを言うとイルルは怒るだけだ。
だから、はっきりと口に出して言えないんだと思う。

参ったな…。

そんな顔されたら、
置いていけないじゃないか…。

「翼は、ちゃんと、治療したから、一緒に行けると思うけど…。」

ナターシャさんがイルルに向かって言う。

「ナタが言うなら…。」

うっわ、変わり身はやっ!
イルルは、さっきまで
頑固親父のような視線で
レグナくんを睨んでいたので、
俺は開いた口が塞がらない。

ナターシャさんの治癒に関して
イルルは全く疑問を持っていないらしい。