勇者34歳

「つまり、今、ラウザは俺の紐みたいな滅魔術を使えるわけだな。」

イルルが何の感慨もない声で、
ラウザに確認する。

「うん。」

ラウザが、あっさりと肯定する。

「滅魔の力があるなんて、俺はお袋から全然聞いてないんだけど…。」

「知らないの?」

ラウザがイルルに問う。

知らないの?って言われても
何のことやら。

しかし、ラウザは誰に対しても
答えを求めているわけではなさそうだ。

「魔族狩りの素質は魔族狩りにしか、見分けられないよ。」

ツキヨさんには魔族狩りの素質はなかったってことだな…。

「僕も、色んな人の魔族狩りの素質を見つけてきた。」

ラウザは窓の外を見た。
どこを見ているわけでもない。
ラウザ自身の過去を見ているのかもしれない。

「それで今、滅魔の力を少しだけ得られたにすぎないし。」

「弟子何人?」

イルルが唐突にラウザに聞いた。

「そんなに多くない。」

ラウザは、答えた後、少し考え込んだ。

「イルルの他にはイブナクとか、サウラとか…。」

名前言われても心当たりないし…。
イブナク?サウラ?知らない子ですね。

「会うことがあったら魔符を交換するといい。特に、イブナクは魔族狩りとしては稀代の逸材で、滅魔の魔符を持っている。」

わざわざ名前を教えたのは
滅魔の魔符を持つ人の情報をくれただけらしい。