勇者34歳

「イルル!」

「叫ぶなぽこぽん!俺は大丈夫だ!それより早く部屋に入れ!」

イルルの声が聞こえた!

が。

イルルは魔符を使ったのか、
おそらく人の体重を支えられそうにない細さの
紐状の物体の上に立っていた。
紐は七色に光っているので、魔符で間違いないんだろうけど…。

そして、その紐は地面に接している。

あまりにも重力という絶対的な力を無視した状態に
俺は呆気に取られた。

「いいから、部屋に!あああああ??!」

イルルの絶叫の理由は。

俺が




ベランダから、落ちたから。




俺の体が放り出されて、宙に浮いていた。
それを認識すると、同時に。



あ、俺、死んだわ…。

あまりにも冷静に、俺はそう思った。