勇者34歳

「あー、落ちてしもたか。」

敵だから当然と言えば当然なんだけど、
魔族は平然としている。

「イルル!」

俺はイルルの名を呼ぶが応答はない。

しかし、地面に落ちた音も聞こえなかった。
どこかに引っ掛かっているのだろうか?

「滅する!」

ラウザが、魔族が立っている場所を囲むように
魔符を投げる。

そしてラウザの刀から、円形の
光る模様が現れ 魔族にぶつかった。

しかしラウザの魔符は
ベランダを破壊してしまった。

ちょ、破壊するもの間違ってない?
なんでベランダ壊しちゃってんのー?!

ミシミシと、乾いた木材が割れる独特の音が響く。

あまりにもうるさすぎて、
近くの建物から人が出てくる。

もう近所迷惑がどうこう言ってる場合じゃなさそうだ。
でも、俺のせいじゃないからな。

俺は、イルルの姿を探して、
崩壊しかけたベランダの端を探す。

俺は、実は高所恐怖症だが、
ベランダが崩れ落ちると、
木材の下敷きになりイルルは助からない。
己の恐怖を理性で抑えつけ、イルルを探す。