勇者34歳

「知り合いじゃないし…。」

俺はエクトプラズムを吐きながら
ラウザに答える。

「でも、追ってきたって言ってるけど。」

違う違う断じて違う。

「酷いわー勇者さん。ワイを弄ぶだけ弄んで捨てたんやな?」

泣き真似を始める魔族。

「えっ?!ぽこぽん、そんな関係だったのか?」

信じるなよイルル!

「確かに美形ではあるからわからなくもないが…。」

ラウザ!納得しないで!

「滅していいから。全力で。」

俺、マジで気持ち悪くなってきたんだけど。
吐きそう。

「あんなに甘い夜を過ごしたのに…。」

砂粒ほどもそんな記憶はない。

「銃で撃ち抜かれたあの痛み…忘れられへんねん。」

えっ?!
それは身に覚えがあるんだけど
それって欠片も甘くないよね?!
全力で、鉄錆の味とかそんな夜だよね?!

「知人かもしれないけど、キモいから滅するわ…。」

ラウザはげっそりした顔で二本の刀を構える。
げっそりした顔だけど殺気だけはキレッキレだ。
どういう精神状態なのか、後で感想聞いてみたい。

あれ?そういえばイルルが見当たらないな。

さっきまでラウザの横にいたような。