宿屋の部屋に戻ると、
イルルとリーヴェとラウザがいた。

「ぽこさん、遅いお帰りで。」

リーヴェが一応声をかけてくれた。

イルルは目を閉じていて、
ベッドの上に仰向けに寝かされている。
それだけなら、いつもどおり、
眠いから眠っているのかと思うけど。

イルルの胸のあたりからは
謎の魔法陣が七色の光を放ちながら
浮かび上がっていた。

イルルのベッドの横には椅子があって
ラウザが座っていた。

「な…何やってるんだ?」

「魔符、取り出してる。」

ラウザが短く答えた。

「魔符?」

「ごめん、集中したいから。」

ラウザはそう言って会話を打ち切った。

俺はリーヴェを見る。
それだけで、リーヴェは
俺が何を言いたいのか察したらしい。

「一応、説明できないこともないけど。」

「うん、それを頼みたいんだが。」

「魔族狩りは魔符を持ってて、それを使って色々とできるわけで、今はその魔符を作成する途中。魔符の魔法陣は、個人ごとに違う模様らしいので、今、模様を調べてるとこ。」

なるほど。
魔符が何に使えるかは知らないけど
リーヴェもそれ以上解説するつもりがないようなので
俺はイルルの魔法陣を眺めていた。

「光りすぎ…。」

ラウザの愚痴がたまに聞こえる。

なんとなく、
静まり返った部屋の居心地が悪い。

俺は部屋を見回す。

そういえば、レグナくんと
ナターシャさんが見当たらない。

俺は、宿屋に迷子になっていたから
だいぶ長い時間をかけて戻ってきたから
先に帰り着いているものだと思ってたけど
少なくとも部屋の中には
レグナくんもナターシャさんもいなかった。

「リーヴェ、レグナくんとナタ様は?」

「まだ戻ってない。」

俺は窓の外を見る。
夜になっている。

さすがに、
この時間まで帰ってこないのは
変じゃないかな…?