勇者34歳

「魔法は万能に近いかもしれませんが、できることとできないことがあります。」

うん、わかってたけどね。

「偉大なる勇者の小さな剣士を元の大きさにするのは、ほぼ不可能です。」

不可能とまで言うか…。
光の主は、見た目だけだとレグナくんより格上の天使に見える。
なんか階級とかも高そうだ。

しかしそいつが不可能とまで言うということは、天使から見ても難しいらしい。

「あと2年ほど経てば可能になると思いますが…。」



まだ俺が会社で錬金をやっていた頃、
イルルは何と言っていただろうか。

『俺、今の身長になったのはつい最近なんだ。』

それを言っていたのは5年前。

魔法を使えない普通の人間とは
成長の速さが違うような気がする。



結論…2年では元の大きさまでは育たない。

なんで俺がイルルの成長を気にしないといけないんだろう?

と思って憂鬱になり、ため息を吐いた。

「で、ここの大物を倒せば元に戻るって?」

極力、嫌な感じを与えないように
大人の態度を続けたいところだが
だめだめ無理無理尽くしだと
いくら俺でも凹んでくる。

「時間を奪った張本人ですので…。」

「ほう、それは誠か?」

突然、バカにしたような声が会話に加わる。

嫌になるくらい聞き覚えがあるこの声は。