勇者34歳

「最近あの子見ないな。」

「モグリの子なんじゃないの?」

「いや、ちゃんと学生証あったけど。」

「あの子見ないと生きてる気しないよ、マジ可愛いんだから。」

「のんきだなぁ…。」

「遠くから見てるだけで幸せ。」

「でも、高等科に絶世の美少女が現れたらしいぜ。」

「マジで〜?」

頭の中がお花畑だな。
まぁホントに若いんだから仕方ないか。

「はいはい隣、お邪魔しますよ。」

聞き慣れた声がした。

「JJ。」

「はかどってますか?」

「うん。ナタ様がね。」

俺は視線でナターシャさんを追う。

JJは
遺憾なくコミュ力を発揮する
ナターシャさんを見て少し驚いたけど
すぐに俺を見て話し始める。

「最近学内に現れた人に焦点を当てて調べてみたんですよ。…ターゲットは人前に姿を現していない可能性もありますけど。」

JJはそう言うとリストを渡してくれた。

「うわ、山ほどいるんだな…。」

「密偵部に頼んだらプロに近い仕事をしてくれたので。」

「なんだその部活、何してんの。」

「スパイごっこや探偵ごっこしてるみたいですね。」

「●●ごっこってレベルじゃねぇだろこれ…。」

推定年齢と見た目と性別で記述されている。

早速、どこかで見たような記述を見つけた。



中等科(疑義あり)、女子(疑義あり)…
短髪。直毛。
突然現れた神童、モグリ確定

髪の色と目の色と制服の特徴から
間違いなくイルルのことだとわかる。

なんか既に色々とばれてる…。



高等科、女子
銀髪、くせ毛。
プリンセスナターシャに激似
モグリ。

これは…ナターシャさんだな。



高等科、男子
長髪、直毛。
オカルト研究部に直行
モグリ。

…これラウザ?



高等科、男子
茶髪、延々と学食にいる
ずっと1人でニヤニヤしててキモい。
モグリ。

…リーヴェか…。



「この調査結果ってすぐ学校に出んの?」

密偵部とやらが
すぐにこのリストを学校に出したら
潜入作戦はオシマイである。

「いえ、学校側が密偵部にお金を払わない限りは提出されませんよ。」

「がめついな、密偵部。」

世の中には変な部活もあるもんだな…。